2005年01月30日

いにしえに迷う(終章)

方向を見失ったのは、それから無難な春日大社の参道をそれ、日
ごろ親しんでいる安心感ゆえに、夜の浅茅が原に踏み込んでから
である。昼間なら、広々とした芝生に鹿たちが群れをなして遊ぶ、
のどかな風景である。また隣接する飛火野、雪消の沢、鹿苑ととも
に万葉集にも詠まれ、天平の大宮人たちに、こよなく愛されてきた
土地だ。名前からして、いかにも典雅でゆかしい。今でも、春や秋
には東大寺や興福寺などの見学に疲れた観光客や修学旅行生た
ちの絶好のくつろぎの場となる。  
夜陰に手探りながら、老松の木立の間をさまよった。時々、すぐ
近くで、鹿がかすかに動く気配を感じる。水面がかすかに光って
いるのは鷺池か、それとも荒池か。浅茅が原にいるのか、雪消
の沢なのか。夢遊病者のように、あてどなく天平の闇をいっとき
彷徨した。

そんなとき虚空に、東大寺三月堂の月光菩薩や聖林寺の十一
面観音菩薩、秋篠寺の伎芸天などが、ほの白くぼうっと立ち現れ
ては消えていった。めくるめく幻想の中で私は、なぜか母親の胎
内を想っていた。
        バラ  行雲流水のごとくへ              全文はこちら→★

大和古寺風物誌新潮文庫    東大寺大仏と大仏殿奈良の寺                                     追憶に生きる 建礼門院右京大夫日本の作家
posted by asaborake at 00:36| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(1) | 随想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: 春日大社祭神=武甕槌命経津主命天児屋根命比売神|社格=式内社(名神大)・二十二社・官幣大社・勅祭社・別表神社|創建=神護景雲2年(768年)|例祭=3月13日(春日祭)|本殿=春日造}}春日大社(かす..
Weblog: 観光地に行ってみて
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